

苦戦するトラブルシューティング

歪んだ19kHzが「漏れ」として出現している状態
” ステレオランプが点灯しない ” のまとめ
KT-6005 の FMステレオ復活を目的に MPX基板のトランジスタを全数交換した。しかし以下の症状が残った。
・ステレオランプが点灯しない
・条件によっては点灯するが、ステレオ状態にならない
・強電界でもミューティングが解除されない
・FM音声(モノ)は正常に出る
このため FM検波~ MPX系を中心に切り分けを行った。
1. MPX回路自体の切り分け
MPX基板上のトランジスタはすべて新品に交換済みであり、回路図上も大きな異常は見られない。
また FM OUT → MPX IN はワイヤダイレクトで 19kHz トラップ等も存在しない構成である。
このため MPX回路そのものより IF基板 FM検波出力の品質に問題がある可能性を疑った。
2. FM OUT での 19kHz を観測
以下の条件でオシロスコープ観測を行った。
観測点:FM OUT
・AC結合
・10µs/div
・20 〜 50mV/div
・強電界および確実なステレオ放送局
・比検波バランスVR(VRb2):中央
結果として
・音声信号は確認できる
・19kHzパイロット成分が確認できない
という状態だった。
これは「FM検波は成立しているが MPX に必要な複合信号帯域(~53kHz)が不足している」と推測される。
3. 比検波 IFT二次側の負荷確認
FM OUT に並列に接続されている小容量コンデンサ(100pF)を一時的に外して再確認したところ VRb2を中央から大きく外した位置では
・19kHz が観測できる
・ステレオランプが点灯する
しかし
・正規調整点(VRb2中央)では 19kHzは依然として出ない
・実際のステレオ分離は成立しない
という結果となった。
この挙動から
・比検波 IFT自体は完全に死んでいるわけではない
・二次側の帯域が著しく低下しており、設計通りの動作点が存在しない
と判断した。
4. 原因の考察
今回の症状は、以下の特徴を持つ。
・DC バランス調整は可能
・音量や歪は一見問題ない
・19kHz のみが極端に減衰
・ミューティングは常に「弱電界」と誤判定
これらは、FM検波IFT(二次側)の内部劣化
(内蔵コンデンサ劣化、Q低下、部分短絡など)でよく見られる典型的な症状のようだ。
5. 対応方針
根本対策としては
・同型機からの IF Assy の交換
が最も確実と考える。
一方で応急的、実験的な対応として FM OUT〜MPX IN間に
・小容量コンデンサ(47 ~ 100pF)を直列に追加する外付け補正
・MPX入力側での軽微な帯域補正
により、19kHzパイロットを補いステレオ復活を狙う余地がある。
日を改めて「外付け補正」による復旧を試みる方針とした。
6. 学んだこと
・ステレオランプ点灯=ステレオ成立ではない
・FMモノ音声が正常でも、検波帯域不足でステレオは成立しない
・経年機では FM検波IFT の劣化がトラブルの核心になることがある
・オシロによる 19kHz 確認は非常に有効な切り分け手段
今回のトラブルは「調整不足」ではなく、部品の健全性が設計限界を下回っていることによる問題であり、同年代の FMチューナーでは十分起こり得る症例だと感じた。